色には様々なイメージがある。その中でも最も対称的な色が白と黒だ。
一般的に白は清潔、無垢、純粋といった印象がある。一方、黒は悪の象徴であっ
たり、虚無、退廃的なマイナスイメージが強い。
しかし私は時々疑問に思うのだ。本当にそうなのかと。例えば「無」の状態を
表現するのに白と黒、どちらが適しているのだろうか?暗闇、光の無い世界を表
すのなら黒だが、色彩を与える前段階、例えば絵を描いたりする場合は、白こそ
が無の状態のように思える。
光の無い闇の中に一筋の光が差し込むと、それは白い線に見えるが、プリズム
を通過させれば、いくつもの色に分れて、その白い光は多くの色彩の集合体であっ
たことがわかる。色がそういう光の波長の違いから生まれることを考えると、白
とはあらゆる波長の光を全て反射させているし、黒は逆にそれら全てを吸収して
いる事になる。
そして白も黒も色彩と共存する時には、見事に相手を引き立てる。一見鮮やか
な色達に目を奪われがちになるけれども、実は最も際立っているのは、白や黒で
はないかと思うのだ。しかし、自身は強く主張せず、周囲の色との調和をとって
いる。そういう所には余裕さえ感じてしまう。
真夏の空に浮かぶ雲、浜辺に寄せる波の柔らかな泡、開いたばかりの白百合の
花...そういう白は、清々しくスッと心を軽くしてくれるような気がする。たくさ
んの星達と様々に色や形を変える月をその闇のカーテンに散りばめた夜空、無邪
気な小犬のまあるい目、上質のベルベットのドレス、大切な想い出の品々が収め
られている漆塗りの文箱...そんな黒には不思議と温かさを感じてしまう。黒も白
も相反するものとして対立しているのではなく、お互いを尊重し、それぞれの存
在を認めているようだ。そして私は、そんな白の強くて潔い所や黒の深く包み込
むような優しさが大好きである。